木田公民館は、生涯学習とコミニュティ活動の拠点として、地区の多様な主体が連携・協働する学びの場を提供しています。
福井市の木田地区は、越前中央山地に源をもつ足羽川が形成した緩やかな扇状地に位置します。
「木田」は、平安時代の荘園「木田庄」から、江戸時代の「木田地方」、明治時代の「木田村」へとつながる古い郷名です。
人々が生活していた歴史は古く、約2千年前の弥生時代の集落「木田遺跡」が発掘されています。そして、平安時代、奈良興福寺の荘園「木田庄」としてその名が古文書に現れます。江戸時代には、京へつながる北陸道と美濃につながる東郷街道が交わる道筋が「木田町組」となり、城下町に接する農村は「木田地方」と呼ばれました。
足羽川から取水された「木田用水」の恵みにより豊かな水田地帯として発展し、福井城下の人々に新鮮な野菜を供給していたことが、木田地区の伝統野菜の由来につながっています。また、足羽川の伏流水による井戸水が水源となって、木田地区は福井市の水道事業発祥の地となりました。
明治時代の「木田村」が、昭和11年福井市に合併してからは、住宅地の増加と田畑の減少が進みます。平成16年の福井豪雨では、足羽川の堤防決壊により広範囲にわたる被害を受けましたが、災害を乗り越えながら、市街地を拡大し発展してきました。
木田地区は、市の中心部に近くて公共交通のアクセスが良く、多くの医療機関や商業施設、公共施設があるなど、便利で生活しやすい地区であることから、子育て世代を中心に新たな人口の流入が多くなっています。
木田地区まちづくり委員会では、これまでの事業を継承しながら、さらなる地域づくりのために、2020年、地区まちづくりビジョンを制定しました。
テーマは「笑顔(えがお)✕居心地(いごごち)✕誇り(あこがれ)」。都市化が進展していくなか住民のつながりや絆を深めることを目的として、お年寄りから子どもまでが笑顔にあふれ、居心地が良く、地区への誇りや憧れが感じられるようなまちを目指し公民館とともに活動しています。
●伝統野菜からふるさとを学ぶ
木田地区では、福井の伝統野菜に認定されている木田ちそ、木田青かぶ、板垣大根が栽培されていますが、市街地化によって栽培農家の減少や高齢化が進んでいます。
木田公民館では、この伝統野菜を絶やすことのないように、また、若い世代にも知ってもらおうと、学び合いで伝える伝統野菜による郷土学習を開催してきました。公民館の畑で種まきや間引き、除草、収穫と料理を体験しながら、子どもから大人まで農家の苦労や収穫の喜びを感じ、伝統野菜の特徴やよいところを学習しています。
木田ちそは、150年ほど前から栽培されていて、ちぢれが強く、肉厚で色が濃く風味がよい、梅干し作りに欠かせない赤紫蘇です。調理実習では、ちそジュースや梅干しづくりの他、スイーツや料理、ジュースに使った葉を美味しく食べる工夫なども研究しています。
郷土学習を継続する中で、新しい広がりも生まれています。学んできたことをミニレシピ本にまとめ発行したところ、多くの方が活用してくださり、木田の伝統野菜のよさを伝えることができました。このような学び合いを通して、地域文化への理解や愛着心を育み、木田の伝統を守り伝えていくことができると考えています。
●木田のSDGsトチの木プロジェクト
木田地区は、県道を中心におよそ500本の街路樹トチの木が植栽され、まちなみに彩りやうるおいのある緑の景観をもたらしています。
しかし、一方では、道路や歩道に落ち葉や木の実を散乱させる厄介者でした。その課題解決のために、住民自身が立ち上がったのが「トチの木プロジェクト」です。
秋、自然に落ちてきた街路樹の実を、大人たちが散歩がてらに拾い集め公民館に持ち寄ります。子どもたちもまち歩きでトチの実を集めます。
冬になると、実行委員が集まって実の皮むき作業とあく抜きを行います。硬い皮をとるのはなかなかたいへんですが、プロジェクトメンバーの手作りの用具を使ってがんばります。あく抜き作業は、実を2時間ほど熱湯に漬けた後、広葉樹の灰と石灰を混ぜ合わせます。この時、「餅の木であわりますように」と言いながら回すのが木田流。あわっているか実を口に入れ嚙んでみると…舌がしびれると成功です。こうして道路を汚す厄介者が、「街路樹育ちの木田のとち餅」となって、JA直売所や公民館まつりなどで販売されています。
街路樹の実から、身近な自然の必要性や食の大切さを学ぶ取組みは、住民が主体となって地域環境を再生していく、木田地区のSDGsプロジェクトに発展しました。
●子ども歴史まち探検
木田公民館では、ふるさとの歴史を楽しく学ぶため、まちづくり委員会とともに毎年いろいろなテーマを研究し、親子学習会を開催しています。
「木田遺跡で弥生人になろう」では、今も公園にタイムカプセルのように埋められている遺跡から発掘された本物の土器などの展示、古代の家の大きさを表現する試みや火おこし、勾玉づくり体験などを工夫して、弥生時代の暮らしを想像しながら学びました。「歴史の道と木田用水をめぐるサイクリングイベント」では、江戸時代の街道に沿って流れ、世界かんがい施設遺産「足羽川用水」の一部である「木田用水」を、親子でサイクリングを楽しみながら学びました。
歴史を知識の押しつけにならないように、どうやって子どもたちに実感してもらえるか。これからも試行錯誤が続きます。
近年、木田地区は、毎年約80世帯のペースで人口増加が続いています。こうした急激な変化は、宅地化による治水問題や学校や学童保育の環境、自治会加入率の低下や担い手の継続などといった様々な課題を生じさせています。
木田地区が、これからも「地域の力」を持続していくためには、公民館の社会教育事業と地区団体を中心とした地域コミュニティ活動の両輪で、「共に暮らしあうための意識」を高めていくことが重要だと考えています。
木田公民館は、多様な活動によって生まれた小さな輪をつなぎ、大きな輪へと働きかけて、みんなが木田を好きになる、この街を担っていく人づくりを進めます。
〒918-8105 福井市木田1-1401
TEL/FAX 0776-36-0042
メール kida-k@mx1.fctv.ne.jp
【利用時間】
平日及び土曜日
午前9時から午後9時まで
日曜日
午前9時から午後5時まで
※夜間利用の予約がない日については午後5時に閉館
【休館日】
毎週月曜日及び第3日曜日
国民の祝日に関する法律に規定する休日
国民の祝日が月曜日に当たるときは、その日に最も近い国民の祝日でない日
1月2日から同月4日まで及び12月28日から同月31日まで